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2月19日 藤寿会 (会主・藤間勘市郎師)

藤寿会の会主は家元の直門で私の師匠の先生、その会に誘われて出演した。演目は「静と知盛」の舟子役。
私にとって東京国立劇場で踊ることは最初で最後の経験だろう。静岡とは違う、うれしさと緊張の体験だ。

長唄「静と知盛」 前半、義経との別れの舞を舞う静御前、後半になると隈取をした恐ろしい形相の知盛の亡霊(義経のために壇ノ浦に没した恨み)が登場する。 一人で“静と動”二役を演じ分けるのが見所の舞踊だ。

「舟子」はその間狂言として踊る。 舟子が操る義経一行の乗る船の行く手に黒雲が……のストーリーを持つが、実際舞台では静御前から知盛に扮装換えする時間をつくる踊り。「静と知盛」の立ち方は、もちろん確かな踊り手の方で、声かけしてもらったこと、共演できたことをとても幸運に思う。

ブログ(徒然日記)に稽古中の気持ちや裏話的なことを書いているのでこちらも是非読んでみて!

舞台の経験はとても得ることが多い。ある人は「板の上(舞台)に何回のったかが芸の上達につながる」と話していたが、舞台に向けて稽古する気持ちと自覚がそうさせるのだろう。国立劇場という場所と、藤寿会と言う“高嶺の花”の舞台設定が私に多くの“得”を運んでくれた。会場の雰囲気や客層、出演者や自身の稽古に向けてきた情熱など、本当に驚いたり、考えたり、和んだりしたことがひとつずつ刺激となる。気持ちよく踊れて有頂天になりたい気持ちを隠して、貴重な経験をしたことが実にうれしい。